所長コラム

■食育をどう考える?

北部地域療育センターが指定管理による運営になって3年目の春を迎えます。
様々なご相談や支援がよりお子さんの発達支援という観点からご提案や療育ができる様日々研鑽に励んでまいりますので、引き続きご理解ご協力をお願いいたします。

このセンターを運営するにあたり力を注いだ一つに通園における「給食」があります。学校においても「食育」という言葉をよく聞く様になり、最近では家庭で食事が満足にとれない子どもたちへの支援として「子ども食堂」というものも登場して来ています。昨今では東京都の豊洲市場の移転問題も大きくクローズアップされていますね。

さて教育の分野において「食育」とは何をねらいとしたものでしょうか、単なる「食の安全性」や「食材の知識」「料理への関心」だけではなく、その家族が「食」に関してどのような考え方で「食べる」という行為をとらえているか。それは子どもを育てる環境を考えていく一種のバロメーターであると考えることができるのです。

たしかに子どもの発達からは「食べること」は生命の維持や健康の保持・増進を図る事、咀嚼や嚥下などの食べる機能の発達をはじめ、食事の量や種類等に伴う栄養状態や発育状態を知ること。見る、聞く、触る、嗅ぐなどの感覚の使用、目と手の協応、道具の使用、姿勢の調整などの他に食を通して精神的な安定やコミュニケーションの発達等を促し、まさに人間の成長を図る上でさまざまな学習を含んだ総合的な活動といえます。ともすれば日常生活での忙しい生活を送る現代社会の中で、子育ての基礎となる家庭での毎日の「食」の大切さが軽んじられ、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩(そう)身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で「食」を提供する給食が療育センターにおいてどのような意味合いをもつのか。給食を通して「食」のあり方をかえりみる機会となってほしいのです。食材の安全・安心できる食事の提供、食することの意欲の向上を図るあらゆる環境の配慮を行うことが健全な発育に寄与するものと考えています。

まず生産者と消費者の顔がみえる食材であること。単にコストを下げるための手段を選ばない生産方法(抗生物質の投与、遺伝子組み換え、行き過ぎた環境による飼育や栽培、販路の時間や保存の状態を保つためのホストハーベスト等)での食材は仕入れない。調理については味付けが自然なもの、季節感のあるもの(季節外れの食材は栄養価も落ち、無理に育てるために過度な肥料や農薬散布のハウス栽培で作られている)。外食産業や加工食品の蔓延で添加物が当たり前のように使われ、人工的な濃い味付けの味覚障害の低年齢化。このような食環境の中で、安全・安心、自然な味付けをできるかぎり努力して給食に反映することは必然であると考えています。また生産者との交流や園庭菜園で野菜を育て収穫を味わう事、季節感ある食材を使った献立や調理実習などを実践し豊かな療育環境を作っていく努力をしています。

さて、ご家庭でもぜひ手作りの食事をお子さんと楽しみながら作る機会を作ってみてください。食事は単に空腹を満たすものではありません、大切な人を育てるツールです。
ほくほく通信2017.春号から
社会福祉法人 同愛会
川崎市北部地域療育センター
所長 小倉輝久